選択制確定拠出年金サポート専門FPの中野庸起子です。

厚生年金基金廃止法案の可決を受けて、今後いわゆる3階部分の企業年金のありかたがよりいっそう問われることになるでしょう。
 そこで以前私が執筆したコラムで「確定拠出年金のうちの特にお得な選択制確定拠出年金」というものがあるということについて述べました。今働く世代の老後資金の効率的な積立てと、会社と社員の社会保険料削減、これらが実現できるのが『選択制確定拠出年金』です。企業が現在の基本給与の一部を、給与規定の変更により「生涯設計手当て」に置き換えます。この手当ての部分から従業員各人が給与からの天引きで掛金にするのか、給与としてもらうのかを選択することができるので、選択制と呼びます。毎月の給与の一部(社員自ら選択した拠出額 限度51,000円)を掛金として拠出すると、企業側の社員側にもメリットがあります。

ではこの選択制確定拠出年金で実際のところ従業員と会社はどれくらいお得になるのかを数字でみていきましょう。
 健康保険料と厚生年金保険料は都道府県ごとに異なりますが、私が拠点としている大阪府で見ていきます。(平成24年9月改定後)
 大阪府の保険料はこちらを参照ください。http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3150/h25/1992-119695(全国健康保険協会HP)
前提条件
  給与額毎月30万円(税込み)の41歳会社員(厚生年金加入者 介護保険料あり)  が毎月3万円を選択制確定拠出年金として拠出した場合で見ます。
 拠出前は30万円を社会保険料の算定基準とするため、22等級です。3万円を拠出したあとは27万円を標準報酬としますので、21等級ですね。(あくまで近似値から判定しています)つまり1等級下がります。すると社会保険料はどのようになるか?

企業側の社会保険料削減額

拠出前←毎月の積立額→選択制DCで3万円毎月の差額
17,415円健康保険料(介護保険料含む)16,254円1,161円 ↓
25,149円厚生年金保険料23,472円1,677円 ↓
42,564円月額合計39,726円2,838円 ↓
510,768円年額合計476,712円34,056円 ↓

1年で34,056円、企業側の社会保険料額削減が実現します!

加入者(従業員側)
17,415円健康保険料(介護保険料含む)16,254円1,161円 ↓
25,149円厚生年金保険料23,472円1,677円 ↓
42,564円月額合計39,726円2,838円 ↓
510,768円年額合計476,712円34,056円 ↓

同じく、従業員側も1年で34,056円社会保険料のコストが削減!(9.3%ダウン)

社会保険料は労働者側使用者側が折半で支払っているからです。
合計で年間68,112円もの社会保険料額が削減できるのです。
(なお、上記数字はあくまで近似値計算ですので、実際は少し異なります)
また、実際は労働者側は住民税も減額されますし、使用者側と労働者側双方が雇用保険料も削減できるので、もっとお得になるでしょう。
では、最後に選択制確定拠出年金のメリットとデメリットについてまとめておきましょう。

導入企業のメリット
 企業は確定拠出年金を導入しても掛け金を拠出しないため、資金を準備する必要がない。掛け金は労使折半である社会保険料計算の対象外のため、企業にとっても社会保険料負担が軽減される。従業員だけではなく、代表・役員のみでも加入が可能なため、少人数でも確定拠出年金の導入が可能。医療法人も可能。

導入企業のデメリット
 確定拠出年金の導入や継続のための維持費用や業務負担が増えること。
(導入のためには導入サポートを業とする者に依頼すれば手間が省けるが、その分費用がかかる)

従業員のメリット
 従業員の加入は選択制という名のとおり「任意」であるため、自分の現在の状況や将来のライフプランに沿った資金拠出が可能になり、60から65歳の期間のための「じぶん年金」を自分で形成できる。現時点では公的年金の支給開始年齢は65歳だが、確定拠出年金は原則60歳で受給権を獲得できる。60歳から65歳までの5年間、生活費には1年間で300万円、5年間で1500万円(夫婦1組として)最低でも必要だといわれており、そのお金を準備できる。退職金の受給額が下がっている昨今にとってこの生活費の準備が課題。確定拠出年金は60歳まで引き出せないのが原則であるが、これを確定拠出年金のデメリットではなくメリットととらえられる。掛け金は給与から控除されるため、所得税・住民税とが削減され、かつ標準報酬等級が下がれば社会保険料が軽減される可能性がある。運用期間中は運用益が非課税扱いとなり、そのまま運用に回せるため、運用効率を高めることができる。また、一時金として受け取る場合は、退職所得として退職所得控除が適用され、年金で受け取る場合は雑所得として公的年金等控除の対象となるなど税制の優遇を受けることができることも大きなメリット。

従業員のデメリット
 掛け金を原則60歳まで引き出すことができない。標準報酬等級などが下がることで健康保険の傷病手当金、雇用保険の失業給付金、将来受け取る厚生年金受給額などが減少する。中途退職時の一時金は不可。

選択制確定拠出年金はこのように企業側と従業員側と双方にメリットがありますが、デメリットもあることを認識した上で、メリットを享受すべく、中小企業の導入が広がれば、今後の公的年金不安も解消されると考えます。

この制度を利用してぜひとも「じぶん年金」作りましょう!